安藤サクラの20分のボクシングシーンに涙が止まらなかった。
映画が終わった後、一体自分はどれぐらい泣いていたんだろうと思った。
ラスト30分はずっと泣いていたと思う。
安藤サクラはすごい女優だ。ただ、この映画の魅力はそれだけではないと思う。
泣きたいだけ、なんて理由ではなく、不朽の名作として、ぜひ見てもらればと思う。
そんな「100円の恋」の魅力を伝えるために、ここがすごい!という点を3つ紹介したいと思う。
大きく分けて以下の3つだ。
1、安藤サクラのブスの演技がすごい
2、新井浩史とのコンビがすごい
3、ボクシングシーンが全部すごい
一つずつ解説しよう。
1、ブスの演技がすごい
主人公の一子(安藤サクラ)の実家は弁当屋さん。不規則な生活でぶくぶくと太って、髪もバラバラ。おまけに人とのコミュニケーションも苦手で滑舌も悪い。
負け犬、底辺、そんな言葉が頭に浮かぶ。家を飛び出し、安いアパートを借りて、コンビニのような100円ショップでバイトをする。
その通り道で見かけたボクシングジムにいたのが、狩野祐二(新井浩文)だった。
2、新井浩史とのコンビがすごい
この安藤サクラの魅力は、演技だが素だが分からない自然な演技だが、新井さんもまた自然な演技が上手い人だ。以前、下北沢で見かけたことがあるが、背が高くて独特なオーラのある人だった。
この二人の声を張らないボソボソとした会話が、映画の密度を上げていく。集中しないと、何を話しているのか分からないのだ。
やがて二人は半同棲のような暮らしをするが、「立ち読みしてくる」と言葉を残し、狩野は姿を消し、次に見かけた時には、知らない女と豆腐を売り歩いていた。
この辺までは、割とよくある日本映画的な展開だった。
3、ボクシングシーンがすごい
彼女に残されたのは、狩野の影響で始めたボクシングだった。
必死に練習をする一子。みるみる痩せて、動きにキレが出てくる。きっと実際にボクシングジムに通ったんだろう、シャドウも縄跳びもかなりボクサーらしい本格的な動きになっていく。
この辺りから、あれ、これはロッキーかな、と気づいてくる。
いよいよ体の切れがピークを迎え、デビュー戦を迎える。
客席には家族や狩野の姿もある。
ここからの安藤サクラの演技がとてつもない。表情、呼吸の仕方、声の出し方、全てがリアルであり、鬼気迫る怪演とも呼べるものだった。
怖い、すごい、負けるな、殴るんだ。
なんだ、この試合は、、、気づくとずっと涙が出ていた。
素敵な女優と映画の縁
世の中には、素敵な女優さんだったけど、名作に出会えなかった人もいる。
例えば、牧瀬里穂とか、葉月里緒奈とか。
一方で、「逃げ恥」の新垣結衣であり、古いところでは「打ち上げ花火上から見るか、下から見るか」の奥菜恵だったり、僕の好きな緒川たまきなら「3番テーブルの客」のように、最高の状態をきちんと映像に残してもらっている人もいる。
そこはもう運命である。不幸な女優もいれば、何本も巡り会える幸福な人もいる。
そういう意味で、安藤サクラは「100円の恋」と出会えた時点で女優として最高に幸せであり、彼女を知りたければ、この映画を見れば良い。
僕は3回見た。特に一度も安藤サクラの顔を写さないラストシーンが大好きだ。
ちなみに安藤サクラは、この映画で第39回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を獲得している。映画界も認めているのだ。
ハズレじゃない、名作を見たいなら「100円の恋」がおすすめである。
ちなみにDVDもあるけど、FOD(フジテレビオンデマンド)で見る、あとはアマゾンプライムなら無料で見ることができる。