2015年のM-1の話。
賞レースなので誰が優勝するのか、というのはもちろん大事なんだけど、じゃあ、優勝した人が売れているのか明らかにそうじゃない。
例えば、審査員としてあそこに座っていて芸人よりも、オードリー若林、南海キャンディーズ山ちゃんの方がテレビでの露出度は高い。
そこを踏まえると、M-1は結成10年未満(今回は15年未満)の漫才日本一を決める大会ではあるが、それなら正統派のナイツ、銀シャリあたりで毎年競えば良い話となる。
だが、そうじゃない組が複数いることを考えると、あれは漫才というフォーマットを使って、新しい才能を発見する大会だと言える。
それで見ると「馬鹿よ貴方は」が浮かび上がってくるが、あれは実はオードリーがつくった「ズレ漫才」のカテゴリーである。
もう少し各コンビの分類を整理すると、以下のような感じだ。
各コンビの雑感
馬鹿よ貴方は
ズレ漫才の最新版。会話が成り立たないようで成り立ったりする。
銀シャリ
関西の正統派漫才。完全に「古典」の世界で生きているが、精度、密度は確実に上がっている。
和牛
あれって、おかしいでしょ、で共感を得る、社会の矛盾系。
たまたま今回チョイスしたネタが、という意味だが。あれは受けるが、漫才スキル的にはそこまで必要無いので、評価は高まらないと思う。
タイムマシーン3号
デブネタの最新版。ただ、この系譜ならダイノジの方が大谷さんのキャラが立っている分、力は上。
ジャルジャル
漫才のフレームをズラすシュール系。漫才はこういう形で進行していく、という見ている側の共通理解を把握したうえで、それをズラしていくやり方。「もうええわ」で終わらないなどが分かりやすい例。玄人受けする。考えられたネタ。
スーパーマラドーナ
これはちょっと迷うけど、キモキャラという分類になるのだろう。キモイ人がキモイネタをやるのではなく、普通の人がキモイというやり方。どちらかというと、力のあるツッコミが、ボケを使役していく感じ。個人的には一番好きだったが、新しい、際立ったキャラという意味では違う。
トレンディエンジェル
分類的には芋洗坂係長とかの流れになるのだろう。ハゲ、デブを押し出すスタイル。ただ、彼らの場合は、それを磨き続けたところにすごさがある。漫才のスタイルはそれほど奇抜ではないが、毎日毎晩、一分一秒磨き続けた結果、ああいう人に仕上がった感じ。スピード感、スキルも含めて、もう誰も届かない地平まで来ている。
ハライチ
究極のノリ突っ込み。彼らは完全に新しいノリ突っ込みを発明したが、今回はネタのセレクトに失敗した。もうスタイルがあるのだから、それを磨き続ければよかったのに。
そうやって再度見渡すと、どうにも枠に収まらないのが、ひと組いる。
メイプル超合金である。
それほど爆発的に受けたところは無いが、「ここなんか飛んでるな、WiFiか」とか、最後にドリフの音で終わるなど、細かいところで、既存のフォーマットからはみ出そうとしている。
「もっといじってみたい、色々なエピソードトークをもってそう」と思わせる意味では今大会随一の存在だったと言える(ちょっと調べたところ、赤い服の人はバイセクシャルみたいなので、それだけでも興味深い)。
今回の結果を受けて年末年始のお笑い番組で見る機会が増えると思うが、そこでどういう活躍をして、どういうポジションに収まるかだろう。
あとから振り返った時に「2015年大会はメイプル超合金の大会だった」となる可能性もゼロではない。
いずれにしても非常に楽しみな存在だ。
ちなみに見逃した人はアマゾンプライムビデオ