
タイトルの「あなたは●●ですか?」というフレーズは、僕の好きな日曜日のお昼のドキュメンタリー番組「ノンフィクション」で最初に出てくるフレーズ(あなたにとって大切な場所はどこですか?みたいな)なのだが、今回のタイトルは思わず、すべての日本国民に聞いてみたくなった。
あなたは担々麺にいくら払えますか?
ある日のランチタイム
その週は不思議なサイクルだった。
日曜日の夜にサバカレーを作って食し、翌日の月曜日の昼にインド人がやっているカレーを食べ、その夜に家で担々麺を作って食べ、次の日の昼に担々麺を食べたくなったのだ。
それはたぶん前日に自分が作った担々麺が物足りず、正解を求めていたんだと思う。
お昼に会社を飛び出した僕は、青山通りを歩きながら「そもそも正解なんてあるのか」と考えていた。
表参道で担々麺といえば、紀伊国屋の裏にある「蓬莱」が浮かぶ。「はい、300万円のお釣り!」っていうだみ声のおじさんがいる店だ。そして、安い中華なら「ふ~ちん」がある。
だが、担々麺の本命には行ってない。そう「希須林(きすりん)」だ。
名前だけは知っていたが、お店が分かりづらいところにあり、店内の写真を見ると、どうも敷居が高そうだ。
それでも僕は「担々麺の正解」を求めていた。ひょっとしたらこの店かもしれない。
思い切って店内に入ろうとして、下のメニューを見る。
担々麺 1280円
まじか。担々麺の値段か。だが、僕の足は止まらない。勢いそのままにお店に入る。
「すいません、5分ほどお待ちください」
「では、もう一度来ます」
そういうと、外に出た。
危ないところだった。何をやっているんだ。1280円だぞ。血迷ったか。
そんな言葉を思い浮かべながら、街を歩く。蓬莱に行こう。あそこだって美味しい。
そう思いながら5分ほど街をうろつく。1280円の食べる?と何度も自問自答する。
そして、ふと「コト消費」という言葉を思い出す。コト消費とは、物ではなく、体験にお金を払うこと。今回の件は、コト消費だと考えよう。担々麺ではなく、表参道で1280円の担々麺を食べるという体験を消費するのだ。
え?1280円。頭の中でまた驚いてしまうが、もう止まらない今度こそ店内に入った。
担々麺の正解
僕らはたまに存在しないものを求めて、街をうろつく。
気が利くマスターと一人でゆっくりとカクテルを飲む髪の長い女性がいるカウンターバーや、夫婦でやっている床がギトギトした中華屋。美人姉妹が経営するケーキが美味しいカフェなど、かつて行ったことがあるのか、ドラマか映画で見ただけで実在しないのか、よくわからないが、そんな店を求めて街を歩いている時がある。
担々麺の正解もその一つだと思う。もしも分かっているなら、電車を乗り継いででも行くはずなのに、僕はそんな店を知らない。そもそも正解などあるのだろうか。
そんなことを考えていると、席を案内され、いよいよメニューをオーダーする。
やってきた担々麺の鮮やかな色に驚く。なんてオレンジなんだ。そして肉味噌が驚くほど茶色い。もはや漆黒と呼んでいいぐらいだ。
一気に食べる。
正解があった。これだ、これだわ。こんな美味い店あるんだ。さすが青山。児童施設を作るな、ランチ高いぞ、とかいう街。さすがだ。
高くてまずければ人は来ない。コスパは良くないが、満足度は高いのだろう。んまい、んまい、スープを飲む手が止まらない。うまーい。
オッケー。財布は軽くなった。だが、とりあえず、表参道で働いて10年、ついに間違いないお店を見つけた。問題は一緒に行く人が値段にぶち切れないか。それだけが心配だ。
ちなみに希須林は、赤坂にもあって、そちらも行ったことがあるけど、ちょっと違う気がした。青山の方が美味い。感動レベルに美味いと思う。ぜひみなさんもコト消費で行ってみてください。おすすめです。
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