きなこなん式

フリースタイルダンジョンを観覧してわかったUZIの人柄

先に書いておくと、あの出来事がなくても、このタイトルで記事を書くつもりだった。

書かなかった理由は、フリースタイルダンジョン観覧のルールである「ネタバレ禁止」のためだった。

観覧中何度もUZIが「もしも、いまツイッターとかで結果を呟いているやつを見つけたら教えてくれ。呟いたやつは一生出入り禁止。教えてくれた人は俺とジブラの打ち上げに参加させてあげる!」と言っていた。

僕が観覧に行ったのは2017年11月であり、その放送がまだ続いていたため、感想などを書くのを控えていたのだ。確かパペットを抱っこした人がいて、その次にこの日のラストチャレンジャーが出てきたはずだ。つまり、僕が行った回の放送は終わってない。

そのため、書くのを待っていたが、それがいつになるか分からないので、タイトル通りの記事を書こうと思う。

生だから分かる勝敗が違うという現象

その日は予定よりも仕事が押してしまい、会場となる新木場についたのは19時を過ぎていた。

僕は招待してくれた関係者の名前を告げると、会場へと足を踏み入れた。

すでにバトルは始まっていた。確か18時ごろから始まっていたはずだから1時間は過ぎている。前説があっても、もう2人ぐらいは終わっただろうか。

だいたい1回の収録で5人ぐらいがステージに上がる、合間にライブなどもあるが、何時に終わるかは勝敗によって全然違う、と招待してくれた関係者の人が言っていた。

落ち着いて会場を見渡す。会場のスタジオコーストは、前にトコナXの盟友だった”E”qualを見るために来たことがあったが、この日はがっちりセットが組まれており、かなり雰囲気が違う。

通常のステージの場所に審査員席がある。審査員の左側にジブラとUZIがいて、右側には大きなモニターが映っている。

そのモニターに、テレビで見るのと同じ挑戦者の映像や般若の部屋の場面が映ったりする。

そして、いつものフロアの中央に当たる部分に丸いバトルステージが作られている。

そこでは輪入道が声を張り上げていた。テレビと同じようにチャレンジャーと交互にラップするのだが、決定的に違うのは、字幕がないこと。

そうなると、いくらフローが良くても「なに言っているか分からない」となる。

言葉のキャッチボールである以上、何を言っているか分からないと、内容を掴めない。

その点でモンスターは圧倒的に聞きやすい。特に崇勲(すうくん)は、言葉数が多くない分、良くわかる。

その崇勲が

「お前、何言っているか分からないわ、これが良いラップだっていうなら、俺はそんなのどうでもいい」

ってラップをしていて、「そうだな、聞き取れる、というレベルに達してない人とではバトルじゃないよな」と思うが、審査員は聞き取れているのか、チャレンジャーに票を入れていた。

この辺が現場で見ていた人とテレビで見ていた人のジャッジの読みの違い、つまり現場では勝ちと思った人が負けて、えーと現場で言っているがテレビで見てる人は納得しているという現象を生むのだろう。

ようやく一息つく。「言葉の意味は良く分からんが、とにかくすごい熱気だ」ということは伝わってくる。

ちなみに僕がいるのは、関係者側ということで、ステージの周りではなく、もっと横のチャレンジャーと同じぐらいの高さから見ている。ここは2階席もあり、上にはチャレンジャーなどもいるようで、上に行った時にいた若者がステージに上がったりしていた。

「観覧席には格闘家とかもいるよ」と聞いていたが、この日は特におらず、終わった後に般若や崇勲が周りをウロウロしていたり、休憩中にはACEが近くにいた人と話していた。きっと彼らの招待した人なのだろう。そういう席だった。

ジブラとUZIという名コンビ

いくつかバトルを見て、番組の流れも見えてきた。

挑戦者を呼び込んで、バトルをする、勝つか負けるかは誰にも分からない。
1回戦で終わると、ハイペースで番組が進んでいく。

時間を調節するように、挑戦者との合間に前説の芸人を入れて話をさせたり、ライブをしたりするが、時間調整の主な方法は、UZIとジブラのフリートークだった。僕の時はジブラが今度出る本について話していて、インタビューの裏話をじっくり語ってくれた。到底番組では使えない長さで話をしている、きっと来てくれた観覧者のためのトークだろう。

それを引き出しているのが、UZIだった。しまいには休憩中の審査員席の後ろの方で横になって、友達の家にいるように肘を枕に話し出すジブラ。そこに合いの手を入れて「みんなも聞きたいよな」と観客に呼びかけるUZI。

そういう一つひとつの心配りに彼の人柄の良さが溢れていた。

番組の進行のためもあるのだろう。だが、それはきっと「10分フリートーク」ぐらいの指示であって、観客に気を遣うのは誰の指示でもない、彼自身の判断だろう。

こういってはなんだが、ジブラは自由すぎる。とても司会とは呼べない。と思ったら彼の役割はオーガーナイザーということで要するに現場で感想を言って、自分も楽しんで、勝敗に一喜一憂している。

でも、変な言い方だが、ジブラが「良かったよ」というのと、UZIが「良かった」というのでは格が違う。

松本人志が「面白い」というのと、他の芸人が言うのが違うようにジブラの言葉はラッパーにとって重いのだ。「負けたけど、ジブさんが”良かった”と言ってくれた」という言葉を胸にチャレンジャーは家路につける。

そういう番組の格という意味ではジブラは大事だが、でもやっぱりフワフワして空に浮かんで行きたい風船のような感じであり、それを地面に繋ぎ止めているのが、UZIだった。

僕の中のUZI

さんピンの年の1996年12月に、友人の家で、ライブのビデオを初めて見た。

ライブも凄かったが、まず驚いたのが下のUZIのフリースタイルだった。

16:59ごろ

いま見ると、ゆったりしているし、韻の踏み方も洗練されていない。

でも、当時の僕は驚いた。すげぇ即興でラップってできるんだ。

それを教えてくれたのが、UZIだった。

さんぴんが終わり、ジブラ、ユウザロック、ライムスターが次々と日の目を見る中で、UZIのことはずっと気になっていた。あの人どうしてるかな。

久々に流派RでUZIの新曲のPVが流れた。

曲は「ひとり酒」。悪くないが乗れない。なんだかなぁと思ったのを覚えている。

つまり、彼はラッパーとしてクラシックとなる曲を残したわけではない。

ライブでの存在感はある。城南ウォーリーアーズというグループのライブを見たときもUZIは目立っていた。

それでも、ヒットに恵まれないラッパー。やっと曲出した!と思ったら「ひとり酒」。でも、フリースタイルすごい。

そんな彼がフリースタイルダンジョンに起用され、「ウェイヨー」でブレイクし、ゴールデンのクイズ番組にも出るようになった。

「ああ、良かった、報われたなぁ」と思ってみていた。

UZIさんの優しさに包まれたなら

ちょっと繰り返しの部分もあるが、改めて書く。

テレビで見てる人には見えてないと思うけど、あのフリースタイルダンジョンという番組はUZIがキーマンであり、彼がいるからこそジブラもリラックスして自然体で居られるんだと思う。

別の言い方をすれば、彼の存在はドラクエで言うところの僧侶役であり、バトルで傷ついた敗者を癒し、飽きてきたジブラを回復呪文で直し、番組を進行していた。さらに会場全体に「少し疲れたな、休憩しよう」と声をかけることで、親密さと、観客も含めて全員で番組を作っているという、一体感を生み出していたのだ。

UZIの優しさに包まれた場所。

ラップバトルを見た帰り道、そんな言葉が浮かんだ。

エピローグ

彼のニュースについて、語る言葉を僕は持たない。

改めて思うのは、ヒップホップと麻薬の距離が近いのは、USだけで良くて、それは日本人は真似しなくていいんじゃないかってこと。今回はUZIだったが、目立っていたからであって、別の人であってもおかしくない、それが現実だろう。

そのうち誰かがUZIの代わりにジブラの隣に立つだろう。個人的にはACEが良いと思うが、誰がなろうが、UZIにはかなわないと思う。

もうUZIがあそこに立つことは無いと思う。だからこそ記録として残しておきたかった。

テレビではなく、観覧だったこそ感じられた、UZIというラッパーの人柄を。

あいつマジでいいやつだよ。うん、話さなくても伝わった。

また見たいな。また大きな声で言いたいな。

ちゃんと償って帰ってきてほしい。

そして、また言わせてほしい。誰も言わなくたって、俺はいうよ、ウェイヨー!って。