きなこなん式

タモリa.k.aアンクルTがフリースタイルダンジョンに出たがっていると思う3つの理由

 

下の映像はある日のタモリ倶楽部。

 

けっこう長めにジブラが「ミスターダイナマイト」で「一点突破」とラップした後にいきなり登場する、おじさんがいる。

 

一目でわかる有名人。それがタモリa.k.aアンクルTである。

https://www.youtube.com/watch?v=Q50MaDFRCTI

タモリの時点ですでに本名じゃないのに、さらに別名を用意するあたり、タモさん本気(マジ)である。

 

そして、もうひとつの映像が、ヨルタモリでリップスライムと共演するアンクルTである。

その独特の中国語ラップに、リップスライムが戸惑っているのが、お分かりだろうか。

 

リップのみなさんも予測不可能なラップをなんとなく踊りながら静観する一方で、時折飛び出す、ラップっぽいフローに驚きを隠せない様子。

 

この二つの映像を見ていると、すごく違和感がある。なんだろう、この感じ。ぜんぜんいつものタモさんの脱力感が無い。すごく必死で真剣なのだ。

 

そう、実は何を隠そう、タモさんはラップが大好きなのである。

 

かつて「いいとも」に、ジブラ、ライムスター、ユウザロック、アフラなどが出演したことがあった。

 

アフラが出たときにはヒューマンビートボックスをやってもらってラップもしている。

https://www.youtube.com/watch?v=SeDEFbyOFi0

 

ヒップホップが好きな僕はタモさんとラッパーがどう絡むのか、興味深く見ていたのだが、その時、彼らに質問をするタモさんを見ながら感じたのは「はは~ん、タモさん、俺もラップやれる、俺もやりたいと思ってるな」ということだった。

 

高ければ高い山の方が登ったとき気持ち良いそうだが、タモさんにとってラップという山は「俺なら登れそうな山」として認識されているかもしれない。そんな気がした。

 

マイルス・ディビスが晩年に取り組んだこと

さっきから映像を見せてばかりだが、こちらの映像を見てもらおう。

そこには、いつもリラックスして番組を進行するタモさんが、ありえないほど緊張している姿がうつっている。

 

インタビューの相手は、ジャズの帝王・マイルス・ディビスである。

 

タモリのジャズにおけるアイドルはいつだってマイルスだった。

 

かつてタモさんはマイルス・ディビスに憧れて、早稲田のジャズ研究会に入った。

 

マイルスと言えば、そのあまりに抒情的な演奏を評して「彼のトランペットは泣いている」と評論家に言われたジャズ界の巨人だが、タモリはジャズ研の先輩から「マイルスは泣いているけど、おまえのトランペットは笑っている」と言われて、演奏家としての道を断念した過去をもつ。(その結果、ジャズ研の司会者となり、後の名司会者が生まれている)

 

タモさんがどれだけ手を伸ばしても届かない存在。それがマイルスなのである。

 

そんなマイルスがジャズファンに残した遺作が、ヒップホップとジャズを融合した 『 Doo Bop』 だった。

黒人音楽に強い関心をもち、ファンクをも取り込んだマイルスが、最晩年に挑んだのが、黒人がマイクで自らの主張を熱く語る、ヒップホップを自らの音楽に取り込むことだった。

 

彼が制作途中で亡くなってしまったこともあり、ジャズファンにとってどう受け止められたらいいか分からない、消化不良な一枚になったこのアルバムだが、タモさんにとって神様とも言える存在であるマイルスが、最後にヒップホップに手を付けたことで「ラップとはなにか?」「ヒップホップとはなんだ」という疑問をタモさんが持ったことは、想像に難くない。

ランD.M.C featuring アンクルT

その一方でタモさんは、ヒップホップにかなり早い段階で触れている。 ランDMCが日本に上陸した時に立ち会っているのである。

 

なぜか? それは「いいとも」に ランDMCがゲストとしてやってきたからだ。

 

登場前にお客さんとコール&レスポンスをするなど、かなり「分かっている」アクションをしたうえで、ランDMCを呼び込むタモさん。

ただ、観客として聞くだけでなく、自らもラップを披露。

 

そう、アンクルTはあのランDMCとも共演しているのである。

 

タモさんがラップに自信をもっているのは、日本人としてランD.M.Cとフューチャリングした、というすごい勲章をぶら下げているからなのだ。

 

タモさんの強みはアドリブ力と瞬発力

タモリがラップ好きだ、ということは理解してもらったと思う。
しかも、聞くのではなく、やりたい人なのである。

 

では、なぜタモリは、フリースタイルをやりたがっていると思うのか。

 

それはタモリの一番の強みと関係がある。

 

タモリがまだ無名の存在であり、文化人が集まる飲み屋「ジャックと豆の木」にいる「密室芸人」だった頃、その席にいたジャズ評論家の故相倉久人氏に、僕は当時のタモリのことを聞いたことがある。

 

相倉さんによると、タモリは寺山修二の物まねをしているときに、筒井康隆が「そこで雨が降ってきた!」といえば、即座に寺山さんが言いそうな言葉で反応したという。

 

その様子を見ながら相倉氏が驚いたのは「何よりもその瞬発力、反応の速さ」だったという。
(この辺の詳細は「タモリをリスペクトせよ!」をご参照ください)

 

タモリがいつもリラックスした状態でテレビに出ていられるのは、合気道のように、いつでも反応できる自信があるからである。

 

アドリブ力と瞬発力。それこそがタモリの一番の強点であり、絶対の自信をもっている部分なのだ。

 

そんなタモさんが、フリースタイルダンジョンに興味をもたないはずがない。

 

瞬発力とアドリブに自信があり、ラップが大好きで、尊敬するマイルスも取り入れたヒップホップに興味いっぱいのタモさんにとって、いま話題のフリースタイルダンジョンは、きっと最後に自らの力を示す場所として映っているはずだ。

 

偶然にもオーガナイザーのジブラとアンクルTは共演済みであり、いまもパイプはつながっているはず。だからこそ、きっとタモさんはオファーを待ち、トレーニングをしていると思う。

 

かつて若いころのタモさんはデタラメ外国語をマスターするために、押入れにこもって練習していたという(奥さん談)。いまタモさんは再び押入れに籠り、フリースタイルの練習をしているかもしれない。

 

アンクルTは一体どんな戦いをするのか(DOTAMAとの対戦とかすごい見たい)

 

「次の挑戦者は、こいつだ!」

 

僕は毎回ドキドキしながら、挑戦者を見ている。いつかタモさんことアンクルTが出てくることを信じて。

 

マイルスの遺作。いま聞くとクールでかっこいい。