編集者に必要なスキルは?と聞かれて答えた内容をまとめてみた

いま編集の未経験者の面接を行っているのですが、そこで何度か出てくる質問が「編集者に必要なスキルはありますか?」でした。

 

確かにウェブデザイナーやプログラマーなどは身につけるべきスキルが分かりやすいですが、編集者の場合はスキルが明確でないため質問してくるのかな、と思いました。

 

その質問を受けて僕がしている話が、誰かの役に立つかもしれないと思い、ここに記してみます。

 

その前にまず僕自身の話をすれば、編集歴は15年です。内容としては、地方紙の記者・編集者7年、ちょっと独特な趣味系の媒体の編集を8年ほど担当しています。

 

たいていチームを組んで案件に臨むので、一緒に仕事をした編集者は50人以上はいます。また後輩も10人以上育てているので、その辺りの経験も踏まえて話をしてみようと思います。

 

編集に必要なスキルは半年で覚えられる

 

編集で身につけるスキルは、文字をトルなどの校正記号、印刷の専門用語、トラブル対応、撮影時のカメラマンへのディレクションなどいくつもあります。

 

ただ意外とルーティーンの部分も多いので後輩を見ていると、だいたい半年ぐらいで一通り覚えていきます。あとは稀に起こるトラブルの対処法を徐々に学び、だいたい2年ぐらいで一人前になります。

 

つまり、基本的なスキルは半年で覚えられるのです。しかしそれらは入ってから学べば良いものであって、必要なスキルはなに?(事前に勉強して身につけたい)の答えになってないと思います。

 

では、本当に編集者に必要なスキルとは何でしょうか?

 

僕は結局、最後は「センス」だと思います。

 

センス=才能と思われがちですが、それは違います

 

センスとは「膨大なデータベースを持ち、そこからその場に適切なものを選び出す力」です。

 

我々の仕事では、数百枚の写真から最適な1枚を選ぶことが日常的にあります。その際に何を基準にしているのか。それは、これまで見た写真に関するデータベースとの照合です。

 

データベースの中には日本の有名なカメラマンである、土門拳、森山大道、植田正治、蜷川実花、細江英公、そういった人たちの写真の構図や色の作り方があり、その中で自分が写真集をめくりながら思わず手を止めてしまう写真はどんなものなのか?それはなぜ特別なのか分析し、そこで発見した法則に沿って選んでいるのです。

 

はたから見れば「はい、これ」と一瞬で選んでいるように見えますが、実はそういった過去に見た膨大な蓄積を元に選出しています。

 

ここでいうデータベースとは、本であり、写真集であり、映画であり、絵画であり、名キャッチコピーであり、ポスター、パッケージデザイン、それらすべてです。

 

「適切なものを選ぶ力」の方は、ある程度経験が必要になります。トライ&エラーによって身につくものだと思います。またそれは教えることでより精度をあげていくことができます。

 

しかし、データベースはやはり一人一人が積み重ねるしかないのです。

 

「優秀な職人は色々な知識をきちんと引き出しにしまって、それが必要な時にすぐ取り出せる人だ」という言葉がありますが、それに近いのかもしれません。

 

入社後に伸びなかった人たちは、やはりデータベースが貧弱だったように思います。また、「編集をやってみたい」はその人たちにとって「英語が話せるようになりたい」「楽器ができるようになりたい」と同じ感覚であり、いざ出来るようになると「じゃあ、何を話すのか」「どんな音楽をつくるのか」が求められます。編集の場合は「じゃあ、何を作りたいのか」となります。私はこういうものがつくりたいという核のような物が無いと、やはり編集という仕事は続かないと思います。

 

こういったことを説明したうえで、「編集者に必要なスキルはないけど、まずは名画、名作といわれる本、語り継がれる映画、そういったものを片っ端から見た方が良い。データベースを増やすべきだと思う」と答えています。

 

もちろんこれが正解かはわかりません。あくまで僕が出会った尊敬する編集者たちに共通している項目を考えた結果、そういう結論に行きついただけです。でも、あながち的外れではないと思います。

 

年を重ねて気付いた成功する人の条件

 

そしてもうひとつ最近よく思うのは、結局、人は何に時間とお金を投資したかで人生が決まるように思います。平均的にまんべんなく割り振った人は平均的な人間に。音楽にお金も時間も投じた人は、音楽ライターなどの仕事に就き、洋服に投じた人はファッション雑誌の編集者になる。こないだ外国人のウェブデザイナーに小さい頃なにやっていた?と聞いたところ、レゴと答える率が高かったのですが、デザインを組み合わせていくウェブデザイナーという職業を考えると、それも示唆に富んでいるように思います。

 

そして、もうひとつ思うのは、その金と時間を投資した内容が、たまたまお金に結び付いた人が成功しているだけかもしれないということです。例えばカブトムシを捕るのが大好きな人は売って儲かったとなるけど、カナブンを獲るのが好きな人は金銭的には成功しないでしょう。だから、それは運とも言えると思います。

 

ただ、とにかくいまその道の専門家として敬われている人は、例外なく1万円を渡せばそれを買うし、1時間あればそこに時間を投じると思います。

 

僕自身を振り返ってもバイトしながら月3万円は本に使っていましたし、学生時代は寝る時間以外は全部本を読んでいました。テレビドラマより映画より本でした。だから、編集者になれたんだと思います。

 

これからの時代は平均的であることがリスクだと思います。

 

だからこそ「本が好きで、本をつくりたい、編集者になりたい」という人は、思い切って本に金と時間を振り分けて欲しいと思います。

 

以上が僕が編集者に必要なスキルは?と聞かれた面接の時に伝えたことです。

 

偉そうに書いてしまいましたが、僕もまだまだ勉強中。新しい人に負けないように学び続けて、この世に良い本が一冊でも増えることに貢献していければと思います。

 

とりあえず、こういうのを片っ端からみるといいと思います。

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