2000年に発行された、赤塚不二夫の対談集である。
しかし、これはただの対談集ではない。なぜなら面子がすごいのだ。
まずはタモリを筆頭に松本人志、ビートたけし、立川談志とまさにズラリという感じなのである。
特に注目なのが、弔辞でも話題となった、タモリと赤塚不二夫との関係がよく分かる、過去の新宿時代の内容である。
笑えるエピソードが満載だが、中でも面白いものとしてこんな話がある。
タモリが赤塚不二夫を殴った!?
赤塚とタモリがある一軒のバーに行った時の話である。
二人で楽しく飲んでいるといきなり赤塚が「俺はここでウンコができるぞ!」と言いだした。
その店のマスターが「じゃあ、やってみろ!」というと、赤塚はケツを出してカウンターにしゃがみ込みんだ。
いつもの悪ふざけだろうと思って見ていたタモリだが、やがて赤塚の肛門が本当に膨らんできたので「やばい!」と思って赤塚を殴った。
すると赤塚は「なっ! なっ! 本当にできるだろ!」と言ったという。
タモリが人を殴る姿はあまり想像できないが、それよりも赤塚である。彼も相当に無茶苦茶な人である。
タモリと赤塚不二夫の新宿時代は、伝聞として語られることが多いが、二人が直接当時を振り返っているのは、この本だけである。
それだけでもタモリファンなら必読の一冊と言える。
笑いの巨人たちが残した名言「笑いは緊張の緩和」
さて、さらに本書を読み進めていくと、ある驚きの事実を知ることになる。
それは談志、たけし、松本(彼はこの本ではなく、別の機会に語っているが)の3人がともに「笑いとは緊張の緩和である」という共通した発言をしていることである。
これはもともと自殺した関西の天才落語家桂枝雀の言葉であり、笑いの本質を捉えた名言である。
この対談集の中でたけしは「暴力と笑いは振り子の両極なんだろうね。極度の緊張感を弛緩するための行動が暴力になって、笑いも極度の緊張であればあるほど、大きな笑いが生まれるわけですよ」と語っている。
松本人志の場合は自分の本などでも「笑いは緊張と緩和」と公言し、さらに実践している。
彼を見ていると、怒鳴り声や予想を上回る長めの間を取ることで客を緊張状態にし、それを利用して大きな笑いを生み出しているのが分かる。
つまり松本は緊張と緩和をさりげなく使いこなしているのだ。
また同じように、立川談志は「張りつめていたエネルギーが、ボケと同時に弛緩して放出するのが笑いなんだ」と語っている。
笑いとは何か? どうすれば笑いを生み出せるのか? これは現在、まだシステム化されていないし、解明もされていない。しかし、この本にはその本質が描かれている。
稀代のギャグ漫画家と日本最高峰のお笑い芸人たちとの「お笑い論」が詰まった一冊である。