きみは悪魔の書「ホモ・デウス」を読んだか?

「ホモ・デウス」という本をご存知だろうか。

2017年にベストセラーになった「サピエンス全史」の人が書いた、人類の未来についての本である。

タイトルの通り、人間(ホモ・サピエンス)はこの先、神(ホモ・デウス)になる、という、未来について書かれた本だ。

人類はもはや、疫病も、戦争も克服し、ようやく一息ついた。次に向かうのは死なない研究だ。

そして、そのためにはAI、ビッグデータ、バイオテクノロジーを組み合わせることで、人類は進化していくだろう、ということが書いてある。

その先にある未来はなんだろう。そもそも人間が想像していた神とは何か。

試しに神話などから挙げてみると

・神は動物や人間などの生物を作った
・神は死なない

という2点が挙げられる。

これから人間は遺伝子操作で生き物を作り出し、ガンや脳梗塞などの病にAIを使って打ち勝つことで、事故など以外で死ぬことは無くなるだろう。

それってもはや神じゃない?ということが書いてあるのだ。

もちろん全ての人が神になるわけではない。神になれるのはスーパー富裕層だけである。

じゃあ、それ以外の人はどうなるのか「無用階級」となる。なぜなら仕事はAIがやってくれるから。


本書の中ではこう書いている。

私たちは新しい巨大な非労働者階級の誕生を目の当たりにするかもしれない。
社会の繁栄と力と華々しさに何の貢献もしない人々だ。
この無用者階級は失業しているだけではない。雇用不能なのだ。

この本の本質的な問題

話だけ聞くと、眉唾ものの、かなり飛躍した内容があるように感じる。

でも、じっくり読めば分かるけど、この本は世界で行われている実際の実験結果などを示しながら、かなりていねいに論を進めている。

だから読んでいると「嘘だろ」とは思わない。ああ、なるほど、この研究はこの未来につながるからこうなるね、と納得しながら読み進めることができるのだ。

例えば、先日、日清が培養肉を作った、というニュースがあったが、それがこういう未来につながる、ということが書いてあるのだ。

僕らは個々のニュースは見ているが、その点をつなげて線にして絵にして見せてくれる人がいなかった。

本書はそれを絵にして見せてくれたのだ。あの実験の成果でこうなるぞと。

僕は読みながら思わず「これ悪魔の書だろ、公開しちゃだめだろ」と口に出していた。

そして、同時に気づいた。これだけ決定的に未来を書いているのに、ほとんどの人は読んでいないのだと。

本を読む人は驚くほど減っている

この本で書いているのは、貧富の差なんてものではない。二極化する未来である。

神になる人と、無用になる人に世界が分かれる、と言っているのだ。

でも、そういう衝撃的な本を読むのは、残念なことに金持ちなのだ。

貧困の再生産という言葉がある。貧困家庭の子供はまともな教育を受けられずに貧困になる、という話だ。

この本は世界中で売れているが、貧困層や、知的好奇心が高くない人は、読まないだろう。

富めるものはさらに富み、そうでないものは何も知らずにAIの活躍を見続ける未来。

僕だって読んだけど、何ができるわけではない。でも、予防はできる、無知ではない、という気持ちでいる。

知的好奇心を刺激する本

という感じで気になる点を書いていったが、そもそもこの本は知的好奇心をとんでもなく刺激する。

例えば、性行為の後に男性が「どうだった?」と聞くけど、あれはもう不要だ。これからは特別なベッドを使えば、女性の汗の量などを測定し、本当に良かったのかを壁のパネルに通知するキットが出てきている、など、まじかよ!という話がそこかしこにある。

特に僕が好きなエピソードは、猿の実験の話だ。

まず檻に1匹ずつ猿を入れて、それを2つ並べる。ボタンを押すときゅうりが出てくるので、2匹はそれぞれボタンを押してきゅうりを食べる。彼らは満足そうだ。だが、ある日、1匹の猿だけぶどうも出てくるようになった。すると、きゅうりで満足していた猿がブチ切れて「俺にもぶどうを食わせろ!」と抗議するようになったという。

つまり、幸せとか、満足は、相対的なものであり、自分が「隣のやつより」幸せかが大事なのだ。

そんな本能が埋め込まれた僕らは、いったいどうやったら幸せになれるだろうか。

こういう、思わず深く考えてしまうエピソードが豊富に出てくるのだ。

ちょっと話が逸れるが、日本中に図書館や公民館ができたのは、戦後である。それは戦争の反省として「我々はあまりに無知だった、何も知らなかった」というのがあり、学ぼうということで、それらの施設が全国に作られていった。

でも、いつしか本を読まなくなり、ネットでなんでも分かったような気になっている人が増えた結果、このような素晴らしい本を読む機会が減ってしまったのだ。本当は「ダヴィンチコード」ぐらい売れるはずの本なのにだ。

そして、改めて問わなくてはいけない。インターネットが普及し、スマホを持ち、AIに仕事が奪われる、再生医療が始まる、と言っている時代に僕らは本当に知識を得ているのだろうか。なし崩し的に便利な方に世界は変わっていくけど、このままでいいのだろうか。

人類の未来を知りたいなら、この本に書いてある。僕らはもう最終局面に来ているのだ。

ちょっとでも興味がある人、知的好奇心の高い人は、読んでみることをお勧めする。絶対にハマるはずである。

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