ずっとヒップホップが好きだったけど、急に落語が好きになった。
共通点は「マイク1本」だった。
10代前半から日本のヒップホップにはまる
18歳の頃から日本のヒップホップを聞いていた。当時は日本語ラップの黎明期を経て、アンダーグラウンドのシーンが盛り上がり、ようやく花開いた頃だ。
タワレコ、HMVなどが全盛の時代、CDの試聴器には日本語ラップの専用コーナーもあり、そこで毎日音楽を聴いていた(全部買うお金もyoutubeもダウンロードもできなかった時代)。
東京のシーンが盛り上がり、名古屋も盛り上がり、横浜も盛り上がりと、種火が広がるように、少しずつ全国にヒップホップの熱が広がっていく。
そんな中、札幌から登場したのが、ブルーハーブだった。
文学的な歌詞と、1MC、1DJというスタイル。質より量とばかりにマイクリレーが流行っていた時代に、その潔さは心地よかった。
そんな彼らのライブも見に行った。下北沢エラだ。
「俺たちは、俺とDJのたった二人で会場を沸かせる」
そっかぁ、2人か、凄いなぁと思った。
それからまた月日が経ち、新宿末広亭の落語を聞きに行った。
落語家が黙ると、すべての音が消える。その静寂に驚いた。この空間の音は彼らが支配しているのである。そして、座布団の前にあるのは、マイク1本だけ。
落語家だってマイク1本で空間を支配している
「あれ、ヒップホップは、DJとMCの2人が最小単位だけど、落語家は一人だ。こっちの方がとんでもなくリスク高いぞ。覚悟が違う」
まったく別の土俵にいた音楽と演芸が一つになり、そして落語家が勝ったのだ。
それから僕は落語を聞きまくり、そして、落語家と友達になり、広い部屋のある友達の家で、落語会を開くまでになった。
という話。あんまりそういう流れで落語好きになった人はいないと思うので、ちょっと書いてみた。そう、落語家はすごいのだ。
そういえば、その仲の良い落語家さんが、仲間と飲んでいたら、となりの若いグループと口喧嘩になって、向こうはラッパーらしくて、それに気付いた若手が「師匠こいつらラッパーですよ」となって、負けてたまるか、と寿限無で対抗した、と言うエピソードを教えてくれた。
いいなぁ、その場に同席したかったなぁ~。