「おまえはなかなか男前の方だけど、ジョーくんにはかなわないな」と友達に言われた。もう15年ぐらい前の話だ。
僕は別に男前ではないが、眉毛が太いこともあって、「古いタイプの男前」「戦前の男前」と言われることがある。惜しい感じで。
そういえば、20歳の頃に駅のイスに座っていたら、隣におばあちゃんが座って「あなたはいい男ね」と言われた。その時代の男前らしい。ぜんぜん今風ではない。そんなことは分かっている。
とはいえ、かなわない、と言われるとむかつく。
「だれだよ、そいつ」と言ったら「俺の高校の時のバンドのメンバー、俺がヴォーカルで、彼はドラムだった子」だという。「知らねぇよ」と言ったが、その後もそいつは、酔うと何度もジョーくんの名前を出してきた。
ドラマーはあの人だった!?
「あいつは本当にかっこよかった。いま何しているか知らない」。あまりに何度もその名前が登場するので、男色の気があるのかな、と疑ったほどだった。
それぐらい彼は、その名前を特別な感じで発した。ちょっと上の方を見ながら。
それから月日が経って、その友達と一緒にテレビを見ていたらいきなり「あ、ジョーくんだ」と言った。そこには、オダギリジョーが映っていた。
まだデビューしたてだったが、もうその頃からかっこよかった。もしも、僕がオダギリジョーと同じバンドにいたら、確かに好きになってしまうかもしれない(何もしないけど)。納得です。完敗ですわ。
そしてオダギリジョーは年齢を重ねるごとに、カッコ良くなっていった。
特に2014年にテレ東でやっていた「リバースエッジ 大川端探偵社」が良かった(がんばれ弁当ともらい乳が特に好きだった)。
あのドラマについてオダギリジョーは「演技をしない」ということにこだわったらしい。つまり「素」のままだったってことだ。素があれかぁ。本当にかっこいいやつだ。
友人が余計なことを言ったせいで、いまだにオダギリジョーを見ていると、「そりゃ、かなわないよ」と思ってしまう。かなうわけがない。