テレビ東京のバイプレーヤーズが面白い。日本を代表する名脇役たちが共同生活をするという内容で、みなさん本人役で出演しているが、けっこう素の部分も多いなと感じる。
第6話は寺島進さんがクローズアップされたのだが、それを見ていて思い出したことがある。
僕は22歳の時、いまから16年前に下北沢で寺島進さんと会話したことがあるのだ。
ラジオDJに紹介される
その当時、僕はあるラジオDJと仲が良かった。その人は下北沢のカウンターバーで週に1度マスターをしていて、その店番をしている時はたまに顔を出していた。
職業柄けっこう業界人が集まっていたのだが、ある日顔を出すと「おお、よく来たね。寺島さんだよ」と声をかけられた。え?と思ったがそのまま「はいはい、隣に座って」と気付いたらカウンターバーで寺島さんの隣に座っていた。
ぼくは当時22歳で、そして日本のマイナー映画が好きだった。よく見ていた「J・ムービーウォーズ」というシリーズのひとつに『エレファントソング』という作品があった。
松田美由紀主演で、死体を埋めにいく変な話だった。この映画に寺島さんは花屋の役で出ていた。確か寺島さんの花屋の車を借りて、死体を埋めに山にいくのだ。
当時すでに、寺島さんはたけし映画に出ていたので、そちらの方で少しずつ名前が知られていたころだと思う。でも、僕はたけし映画を見て無かったので、僕の中で寺島さんはその花屋の役の人だった。
何か話さなきゃと思って「『エレファントソング』見ました。『花を慈しんでくれよ』というセリフが良かったです」と言ったら「うるせーな!なんなんだよ!」とうざそうにしていた。
その言い方が邪険に扱っているんだけど、別に嫌われているわけじゃない、というか、どうやら照れているような気がした。若かったからかひるまずに、その後も話しかけ続けた。答えてくれることもあれば「いいだよ、うるせーな!」みたいな返事も多かった。
たぶん5分ぐらいの短い時間だったが、あの時間はいま思い出しても、とても貴重で「うるせーな」とかいっぱい言われたけど、それでいてあたたかい、寺島さんの優しさみたいなものに触れた気がした。
バイプレーヤーズを見ていると寺島さんが「うるせーな、ばかやろう」と言う場面が何度も出てくるけど、そのたびにあの日の下北沢のことを思い出す。
会ったから言える。あの人は口は悪いけど、すごく良い人です。