なんだか最近コーヒーブームのほかに、クラフトビールやDIY、さらには「タイニーハウス」と呼ばれる小屋を作ったりと、明らかに何か新しい潮流が出てきている。
手作りブームかなと思うけど、そんな単純な話ではなさそうだ。
これを偶然と考えるかどうかは『ヒップな生活革命』を読んでいるのかで決まると思う。
それぐらい時代の流れを的確に記した本だと思う。
この本が出る前と、この本が出た後、と分けてもいいぐらいカルチャーの分野で変化が起きたように感じた。みんなこの本に触発されたのかな、というぐらい。
リーマックショックを機に生まれた新たなライフスタイル
この本は2014年、リーマンショック後のアメリカで起きていたライフスタイルの変化を紹介した本である。
アメリカといえば、食事がまずくて、コーヒーは薄くて、ピザやファストフードなどの不健康な食事をして、中国の工場をフル活用して、効率だけを求めていたイメージがある。
そんなアメリカが変わってきているという。アメリカのブルックリンやポートランドを中心にサードウェーブコーヒーと呼ばれるインディペンデント系の美味しいコーヒーが登場したり、終わったといわれていたレコード人気が再燃したり、産地直送の新鮮な野菜が売れるようになっているそうだ。
一体アメリカに何が起きたのだろうか?
震源地に住むライターが記したリアルタイムな変化
この本はブルックリン在住の佐久間裕美子さんが、これまで取材した人々のコメントなどをまとめて、文脈をつけて紹介したもの。
これにより、なんとなく店で扱う商品が変わってきたな、ライフスタイル提案型の店はだいたい西海岸だな、とかぼんやりと感じていたことを一つのまとまりとして理解できるようになった。
このライフスタイルの変化のきっかけは2008年のリーマンショックだった。
「経済が破綻したことで収入は少なくなったけれども、以前より良いお金の使い方をするようになった。どこでどんな風に作られた商品か、その商品への思いが分かるものを買おう、名のない工場で作られたものではなくて。
そういったことがこうした流れになっていると思う」というコメントが示すように、ファストフードと大量消費の名のもとに効率化を図っていたアメリカ社会が「手間がかかっても価値があること」に舵を切ったのだ。
では、変化したアメリカ人はどこに向かったのか。
それは「効率」とは全く反対の「自分で作る」という方向だった。
やりたいことを自分の手でできる社会
この本にはこれからのビジネスを考えるうえで、興味深い事例が数多く出てくる。
例えば、あるペーパーマガジンのクリエイティブディレクターが、不景気で仕事が減り、落ち込んだ時に友人に誘われたマーケットで何を出品するか迷った結果、斧を作って売った話がある。その人は斧が好きだったが、本当に欲しい斧が存在しなかったからだ。
それを周りの人に売っていたら評判になり、生産量を増やすために老舗の斧メーカーと組んで、ヒットを生み、いまでは大きなアウトドアブランドになった話。
自分が欲しいものが無くて、作ったら評判になって、いまでは何店舗も構えてる、という話が沢山出てくる。
それを可能にしているのが、インターネットのサービスだ。
例えば、何か製品を作りたい人がいる、暇な工場がある、それをマッチングするサイトがあって、それを使えば、自分がメーカーになれる。
この感覚は、いまどんどん日本にも広がっているし、これからさらに増えていくだろう。また地方創生の意味でも得るものが多いはずだ。
新しい豊かさを考えるうえで、この本は欠かせない一冊になる。