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村上春樹の名作短編を文鳥文庫で楽しむ

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表参道の駅から地上に出たところの交差点に「山陽堂」という本屋がある。表参道で120年続く老舗の本屋さんで、こんな本を見つけた。

この長くても16Pしかない「文鳥文庫」という存在は、先日「本フェス」で見かけたんだけど、そこにあったのは太宰の「メリイクリスマス」とか川端の作品だったので、著作権切れのを扱っているのかな、と思ったら、まさかの村上春樹。しかも、知る人ぞ知る名作短編『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うこと』だったので即買いしてしまった。しかも、126円。安い。

本はじゃばらになっていた

中を開けてみると、製本されているわけでなく、じゃばらのようにたたまれている。

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※どうやら、この文庫のために改訂しているらしい。

文鳥文庫のサイトを見たところ、すでに16冊が発売されており、ラインナップは以下のようになっている。

001 『走れメロス』 太宰治
002 『注文の多い料理店』 宮沢賢治
003 『白』 芥川龍之介
004 『変な音』 夏目漱石
005 『堕落論』坂口安吾
006 『檸檬』 梶井基次郎
007 『手袋を買いに』 新美南吉
008 『高瀬舟』 森鴎外
009 「刺青」谷崎潤一郎
010 「雪もち」幸田文
011 「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子
に出会うことについて」村上春樹
012 「雨のなかの噴水」三島由紀夫
013 「初恋」尾崎翠
014 「メリイクリスマス」太宰治
015 「賢者の贈り物」オー・ヘンリー 柴田元幸=訳
016 「バッタと鈴虫」川端康成

柴田さん翻訳の本もあるということは著作権切れしていないものもあるので、ちゃんと村上春樹から許諾を取ったのだろう。

値段は手ごろだが、外側も中身も手触りの良い紙を使っており、「著作権切れで金儲け」的な安易なものではなく、しっかりとしたものを作ろうという志の高さを感じさせる。

それにしても、村上春樹の中でも、あの作品をとりあげるとは、なかなか分かっているなぁ、という感じがする。そして、それを青山で売っているのが素晴らしい。

もしも100%の女の子と出会ったら

この作品について村上春樹は、あるインタビューの中で『1Q84』の元になった作品と語っている。短いながらも彼にとってそれぐらいインスピレーションの源になった作品であり、海外のファンの間でも、これが一番好きという人が多いらしい(これも村上春樹が語っていた)。

確かに本書を長く丁寧に書いたのが、『1Q84』であって骨格というかメインテーマは同じである。僕は『1Q84』が作品としては合わなかったので、シンプルな本書の方がよっぽど好きだ。

ストーリーは簡単だ(ネタばれ無し)。

主人公は原宿の裏通りで100%の女の子とすれ違う。だが、声をかけれず、通り過ぎてしまう。後から彼はどう声をかければよかったのだろう、とウジウジと考える。そこからが村上ワールドで、なんだかステキな物語が紡ぎだされる。

だが、元はと言えば「かわいい子に声をかけれなかった後悔」の話であり、僕は表参道で4年、南青山で3年働いているが、そういうことは青山を歩いていると、ちょこちょこと起こる話である。

信じられないほどステキな女性とすれ違う。でも、何も言えなかった。。

これで終わらないのが小説家のすごいところ。こんなに素晴らしい物語を構築できるんだ、ブロガーならこれだけでカリスマになれるレベルだわと思う。

この先は実際に読んでみてください。手軽に読めるので。

青山で見かけた村上春樹

村上春樹は事務所が青山にあり、神宮に野球を見に行くということから、行動範囲は表参道、原宿、外苑前あたりとなる。

僕も一度だけ青山通りを奥さんらしき人と歩く、村上春樹を見たことがある。追いかけて握手をする勇気は無かったので、紀伊国屋に向かう彼を後ろから見ていたが、そのすっきりとした首と背中のラインは小説家というよりは、アスリートだった。そしてよく日焼けをしていた。

メディアにあまり出ないこともあり、誰にも気づかれずに、普通に歩いていた。

青山という街には、村上春樹の足跡のようなものが点在している。

好きだというカレー屋、日本一だというマティーニを出すバー、そういうものがちょこちょことあるのだ。

つまり、ここは彼のホームタウンなのだ。

作品としては「国境の南、太陽の西」もけっこう青山が登場するが、やはり村上春樹のホームタウン青山で読みたい本ランキング1位は『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うこと』だろう。それが売られているのだから、こんなに幸福なことはない。

この126円の小さな本を山陽堂で買って、5分ほど歩いて、蔦珈琲店あたりでのんびり読んだら、ステキな時間が過ごせると思う。

久々に心からおすすめしたいものに出会った気がする。

村上春樹ファンも、今度表参道に行く予定がある人も、ぜひぜひ手にとって見てほしい。

ちなみにプレゼントにもおすすめです。